住宅業界は今、労働力不足や職人の高齢化という課題に直面しています。そのうえでお客様の期待に応え、高品質な住宅を提供するため、デジタル技術を活用した業務変革、すなわちDXが不可欠な状況になっています。
住宅メーカーの「積水ハウス株式会社」では、契約から設計・生産・アフターサービスまで、様々な工程でDXに取り組まれています。工事現場での施工管理においても、積極的に現場DXに取り組まれています。同社で現場DXを牽引する施工本部 施工イノベーション推進部長に、現場DXのキーテクノロジーであるクラウドカメラ「Safie(セーフィー)」を開発・提供するセーフィー株式会社代表取締役社長CEO佐渡島がインタビューを行いました。住宅業界が抱える課題と、映像・AI活用が進む先に描く未来の可能性について語り合います。
(取材2025年10月)
目次
“「わが家」を世界一幸せな場所にする”をグローバルビジョンに掲げる積水ハウス株式会社は、住宅業界のトップランナーとして、施工管理の最前線にDXを積極的に取り入れています。その取り組みを牽引するのが施工本部 施工イノベーション推進部です。今回は、CEOの佐渡島が、同部部長の松谷氏を迎え、積水ハウスの現場DX戦略の全貌に迫る対談です。「映像による現場の見える化」から「映像データ ×AI」の連動に至るまで、同社がいかにして現場の生産性と安全性を高めていこうとしているのかに迫ります。
積水ハウスが向き合う、年間1万戸以上の現場稼働における課題とは
佐渡島:
積水ハウスさんは、年間1万戸以上の現場を施工されているそうですね。現在、建築業界全体で人手不足が深刻化していますが、ハウスメーカー特有の「お客様の土地で工事を行う」という条件下では、現場が抱える具体的な課題にはどのようなものがあるのでしょうか。また、現場監督は一人あたり常に複数の物件を並行して担当されていると伺いました。限られた人員の中で効率的に現場を管理するためには、どのような点に注力すべきだとお考えですか。

松谷さん:
現場では、当社に限らず業界全体で技術者の高齢化が進み、若手人材の不足が課題となっています。このような状況の中で事業を持続的に展開するには、「限られた人数でいかに効率的に現場を管理するか」が非常に重要です。
佐渡島:
なるほど。そのうえで、現場監督の方は日頃どのような点に気を付けて施工管理をなさっているのでしょうか。
松谷さん:
現場で最も優先すべきことは、まず安全の確保です。そのため、「ヘルメットの着用」や「フルハーネスの装着」といった基本的な安全対策が確実に実行されているかを確認します。さらに、クレーンなど重機が計画通りに設置されているかといった現場環境の確認も、安全を確保するうえで重要なチェックポイントとなります。そのうえで、建物の品質確保、お客様対応、近隣住民様への配慮、さらには工事中の予期せぬトラブル対応まで、日々の細かな対応が積み重なり、現場監督の負担や業務量は増大しています。

佐渡島:
なるほど。現場の技術的な管理だけでなく、対人業務も含めて本当に様々な業務を実施されていらっしゃるわけですね。現場監督の業務のうち、現場での施工監理以外の業務——たとえば移動や事務処理——はどのくらいの割合を占めているのでしょうか。
松谷さん:
現場巡回やお客様対応がメインではありますが、事務作業や現場への移動にも一定の時間を割いているのが実情です。当然、現場監督一人で現場を管理することはできないので、当社では、グループ会社の積水ハウス建設や協力工事店の管理者と連携しながら、現場管理を実施しています。
昨今、お客様ニーズの多様化や建物性能の向上に伴い、より高度な施工技術や複雑な判断が求められる工事が増えてきています。そのような背景を踏まえて、事務作業に関連する負担を軽減し、現場監督が「現場確認」や「職人やお客様とのコミュニケーション」により集中できる環境を整えることが、積水ハウスとして今後取り組むべき課題だと考えています。
“言葉ではなく映像で伝える” 現場DXがもたらす施工監理の進化
佐渡島:
実際に、Safieの導入が、現場監督の業務削減に具体的にどう結びついているのでしょうか。
松谷さん:
Safieを現場カメラとして導入することで、現場監督の「見えない不安の軽減」と「業務時間の創出」に大きく貢献しています。以前まで、現場の状況確認のために現地に足を運んだり、職人など工事関係者に電話で確認する必要がありました。Safieを導入したことで、遠隔でも迅速な確認と判断が可能になり、いつでも現場が見られる安心感が生まれたほか、工事関係者とのコミュニケーションの質も向上しました。
また、映像で確認したうえでコミュニケーションをとることで、情報伝達の正確性が向上し、誤解の発生や工事の手戻りを防止しています。

佐渡島:
手戻りがなくなることは施工管理の安定に直結しますね。事務作業の効率化についても、何か構想をお持ちなのでしょうか。

松谷さん:
はい。例えば、現在は施工記録のために写真を撮影し、報告書に出力して保管しています。今後は、撮影された写真を関係者が承認することで、その写真自体が「報告書」になる未来を実現できないかと考えています。つまり、報告書の作成・出力という事務作業そのものを、DXにより無くしていけないかと考えています。
また、工事関係者がSafie Viewerを介してリアルタイムに工事進捗を把握できるようになり「いまどこまで進んでるかな」「明日から現場に入っていいかな」といった調整が、関係者に確認したり、現場に行かずとも行えるようになりました。状況確認に費やしていたコミュニケーションコストを減らしていくことも一つの業務変革、すなわちDXであると認識しています。
佐渡島:
現場巡回を効率的に行い、手戻りをなくし、事務作業をゼロに近づける。現場カメラの導入は単なる“確認”ではなく、職人や現場監督の意識を変え、施工管理そのものをアップデートするDXの取り組みなんですね。
松谷さん:
その通りです。映像による“現場の見える化”は、現場の透明性を高めるだけでなく、関わるすべての人の安心感を生み出しています。こうした効率化は最終的にお客様の満足度向上にも直結します。映像で問題を早期発見できれば、引き渡しの遅延を防ぎ、「契約工期通りに高品質な住宅が完成する」という信頼をお届けできます。

“人間愛”を軸に、現場DXを企業文化へ——データとテクノロジーで創る未来
佐渡島:
積水ハウスさんでは、単に現場の課題解決に留まらず、データを活かした次のフェーズを見据えている印象があります。
松谷さん:
そうですね。我々は直近の生産性向上や業務効率化はもちろんのこと、10年後(2035年)のありたい姿を見据え、そこから逆算して現在の取り組みを見つめなおすことも行っています。そのうえで、まずは現場の見える化を整え、現場に関するデータを蓄積、利活用していくことは、将来に向けて非常に重要なことだと思っています。
例えば、現在人が行っている確認業務は、将来的にはドローンやロボットが代替できるようになるかもしれない。ドローンやロボットが現場を自律巡回できるようになれば、工事進捗や品質・安全の確認ができるようになるかもしれない。これらはあくまで構想ではありますが、基礎技術の発展にも期待して、10年後(2035年頃)にそのような未来が来るのではと想像しています。
佐渡島:
最近は、3D空間とロボットの連携も進化していますよね。Unityのようなシミュレーション環境で何百体もの犬型ロボットを走らせ、あらゆる条件下で最も安定して動けたAIを実機に学習させる。すると、実際のロボットが転ばず、迷わず、安全に現場を巡回できるようになります。住宅現場の1階・2階を小型機が日常的に巡回し、記録と報告を自動で行う。まさに「AI×ロボット×データ」が連動する、現場DXの進化形だと思いますが、実際の住宅現場は狭く、センサーが干渉するなどの課題もあると思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。
松谷さん:
そうなんです。住宅はゼネコン現場と比べて空間が限られているため、 センサーが過剰に反応してドローンやロボットの動作が制約される課題があります。さらに、住宅は階段や段差など、ロボットが自由に移動できない物理的な制約もあります。それでも、狭隘部以外での巡回や映像記録といった用途では十分に実用的であると考えております。将来的に技術が発展し、実際の現場監督と同じように屋内外を巡回できるドローン・ロボット技術が進化すれば、現場の施工管理はさらに効率化されていくのではないかと思います。
まずは、映像データをはじめとするデータ基盤をAIエージェントが参照・分析できるようになれば、現場監督は状況確認や判断に費やす時間を大幅に削減できます。“説明や情報共有のための会話”をなくし、必要な情報を即時に取得できる環境を整える―これが、現場DXの次のステージと考えます。
佐渡島:
非常に本質的なDXですね。つまり、単なるテクノロジー導入ではなく、“人の判断を支えるデータ環境づくり”が肝心だと。
松谷さん:
その通りです。最終的な判断は、やはり人の知識や経験、感性に依存します。どんなに技術が進んでも、人の経験値に依存する部分は多いため、どこまでAIでカバーができるか、どういうデータを蓄積していくかという部分が非常に重要になってくると思います。最終的なアウトプットはやはり「人」の判断が不可欠です。

松谷さん:
我々の次の課題は、現場DXを一過性の取り組みでなく、組織文化として根付かせることだと思っています。DXとは単なる業務のデジタル化ではなく、“人の意識や行動、働き方そのものが変わる”ことだと思っています。今回、当社の社内表彰制度で現場DX賞を受賞した千葉支店では、建築長が現場DX推進に強いリーダーシップを発揮し、職人さんや協力業者さんまで巻き込んで推進したことが大きな成果につながりました。こうした取り組みを、企業全体の仕組みとして定着させることが我々の使命です。
また、現場DXを推進するうえで大切なのは、現場に関わる全ての人の気持ちに寄り添うことだと考えています。DXとは、単に業務をデジタルに置き換えることや、強制的に仕組みを導入することではありません。どんな思いで業務に取り組んでいるのか、どこに負担やストレスを感じているのか——その理解がなければ本当のDXにはなりません。現場DXを進める中でも、私たちは常に「人が介在する温かさ」を失わないことを大切にしています。当社の企業理念である「人間愛」を基盤に、データやAI、ロボットを活用しながらも、現場に関わる人の思いや価値を尊重し続ける。それがDXの本質だと考えています。
佐渡島:
技術も人も、お客様との関係もすべて循環している。それが積水ハウスさんの現場DXの本質ですね。
松谷さん:
ありがとうございます。良質な住宅は、社員、職人、お客様——関わるすべての人が幸せであって初めて成立します。“「わが家」を世界一幸せな場所にする”というグローバルビジョンの実現に向け、私たちはDXを単なる効率化の手段ではなく、“人を中心にした未来づくりのプロセス”として進めていきます。

お話を伺った方
積水ハウス株式会社
施工本部 施工イノベーション推進部長
松谷 裕治さん
「積水ハウス株式会社」公式サイト https://www.sekisuihouse.co.jp/
取材協力:オリックス株式会社
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